イーノックカウに帰ってきた僕たちは、そのまんま冒険者ギルドに向かったんだ。
でも、ベニオウの実が入った箱を持ったまんま入る訳にはいかないでしょ?
だから入り口の前でフロートボードの魔法を解除して、とりあえずそこに置いとくことにしたんだ。
「これは大切な依頼の品だからな。少々時間がかかるかもしれないが、しっかり見張っておいてくれ」
でもそのまんまにしとくと、誰かに取られちゃうかもしれないでしょ?
だからバリアンさんがパーティーのみんなに見張っててねって頼んだんだ。
「解りました!」
そしたら一番年下のボルティモさんが真っ先にお返事をしたんだけど、
「ああ、いや。エルシモは一緒に来い。お前も現場にいた当事者の一人なんだからな」
バリアンさんに一緒に来てって言われちゃった。
って事でお留守番は体のおっきな二人に任せて、僕たちは冒険者ギルドに入る事にしたんだ。
今は朝でも夕方でもないでしょ?
だから冒険者ギルドの中はあんまり人がいなくって、そのおかげで僕が入ってきたことにカウンターで暇そうにしてたルルモアさんがすぐに気付いたんだ。
「あら、ルディーン君。いらっしゃい。お父さんはまだ、裏の買取窓口にいるのかしら?」
ルルモアさんはね、村を朝出発してイーノックカウまで来るといつも大体こんくらいの時間に着くから、先に僕だけ入口んとこにおろして、お父さんは裏の買取カウンターに行ってるんじゃないかって思ってみたい。
あっ、そう言えば森に行く時、ストールさんにここまで連れて来てもらってバリアンさんたちに会ってから、そのまんま中に入らずに森へ向かったんだっけ。
だから僕、今日は違うんだよって教えてあげたんだ。
「ううん。お父さんはいないよ。僕、今森から帰ってきたとこなんだ」
「えっ? でも、ルディーン君。今日は森に入るための木札を取りに来てないじゃないの」
森へ行く時にはね、誰が入ったか解るようにって冒険者ギルドで木札をもらってかないとダメなんだよ。
でも僕、冒険者ギルドに入らずに森に行っちゃったもんだから、今日はもらってないんだよね。
だからルルモアさんはびっくりしたみたいなんだけど、
「ああ、それは俺たちと一緒だからですよ」
「えっ? ああ、バリアンさん。あなたがいるって事は……ああ、なるほど。フランセン様からのご依頼だったのですね」
後ろからバリアンさんが声を掛けたら、すぐにその理由が解ったみたいなんだ。
バリアンさんたち深緑の風は、ロルフさんとこの専属ってやつでしょ?
そう言うパーティーはイーノックカウから出る時に門のところでロルフさんちの印が入った物を見せるから、わざわざ冒険者ギルドに木札をもらいに来なくってもいいんだってさ。
「しかし、フランセン様のご依頼ならばここにに来る必要はないですよね?」
「ああ、ちょっと面倒というか、困った事が起こってだな」
バリアンさんはそう言うと、まだ入り口んとこにいたボルティモさんとお姉さんたちを呼んで、
「実はこの3人がゴブリンに襲われていたんだが、そのケガをルディーン君が魔法で治したんだ」
「なるほど。その治療費に関してのご質問ですね。それならば大丈夫です。ポーションでの治療と違い、魔法での治療は町や村などの外である場合は治療費を取らなくてもよいという事になっているんですよ」
ルルモアさんはそう言うと、治癒魔法が使える人と外に出る事なんて普通は無いから知らなくても仕方ないよねって笑ってたんだ。
でもね、すぐに頭をこてんって倒して僕にこう聞いてきたんだ。
「あれ? この話は前にルディーン君にもしたはずよね? この人たちには話さなかったの?」
「ううん。僕、お金なんかいらないよって言ったもん」
「あら、そうなの。でもそれなら、なぜわざわざ? 一応確認しておこうと考えたのでしょうか?」
「いや、それがな。こいつが、ルディーン君が魔石を使ってこの子たちを治したと言ったからなんだ」
バリアンさんがそう答えると、ルルモアさんは一瞬何を言われたのか解んなかったのか、また頭をこてんって倒したんだよね。
でもすぐにびっくりした顔になって、
「少々お待ちください。すぐにギルドマスターと会えるよう手配します」
ルルモアさんはカウンタイーの奥にある階段を凄い勢いで駆け上がっていっちゃったんだ。
「お待たせしました。ギルドマスターがお会いになるそうですので、こちらへどうぞ」
ちょっとしたら戻ってきたルルモアさんに連れられて、僕たちは階段をのぼってったんだよ。
でね、ギルドマスターのお爺さんがいるお部屋まで行くと、ルルモアさんはコンコンコンってノックをした後、そのままドアを開けちゃったんだ。
「ギルドマスター。皆さんをお連れしました」
「おお、入れ」
でもギルドマスターのお爺さんは怒ったりしないで、すぐに入って来てって。
だから僕たちは、ぞろぞろとお部屋の中に入ってったんだ。
「それでだ、一体何があったのだ? ルディーン君がいるという事は、まだ幻獣でも出たか?」
「いえ今回は、ルディーン君がこの子たちに魔法で治療を施したと言う話でして」
僕たちが椅子に座ると、ギルドマスターのお爺さんはさっそくルルモアさんに何があったの? って聞いたんだよ。
そしたら魔法でおケガを治したんだよって言うもんだから、ギルドマスターのお爺さんは何だそんな事かって笑ったんだ。
「ルルモア。彼が治癒魔法を使える事は、お前も知っている事だろう? そんな事でわざわざこの場を用意したと言うのか?」
「いえ、違うのです。どうやら今回は、魔石を使っての治療だったようで」
でもね、魔石を使ったって聞いてびっくり。
今度は、ちょっと怖い顔して僕にこう聞いてきたんだよね。
「ルディーン君。魔石を使った治療との事だが、それはどんな魔法でどれくらいの大きさの魔石を使ったのかな?」
「えっとね、使った魔法はキュア・コネクトって魔法で、使った魔石は……あった! これとおんなじくらいの奴だよ」
僕はそう言うと、魔石が入った袋からクラウンコッコの魔石を出して見せてあげたんだ。
そしたらね、今度はルルモアさんまでちょっと怖いお顔になっちゃったんだ。
「どうしたの? 僕、なんか変な事、言った?」
「えっ? ああ、いいえ違うわよ。ちょっと驚いただけ」
だから僕、ちょっと心配になって聞いたんだけど、そしたら大丈夫だよって言われて一安心。
でもね、ギルドマスターのお爺さんはちょっと違ってみたいなんだ。
「キュア・コネクトか。グランリルの子供が治癒魔法が使えると聞いた時から、いずれ近いうちに使えるようになるであろうとは思っていたが……。それに使った魔石がこのクラスとなると……」
ギルドマスターのお爺さんはそう言うと、ルルモアさんにこう聞いたんだ。
「確かこのクラスの魔石は今、少々品不足ではなかったか?」
「えっ? あっ! 確かにそうです。これはちょっとまずいですね」
ギルドマスターのお爺さんに魔石の値段の事を言われて、ルルモアさんはすっごく慌てだしたんだよね。
だからどうしたの? って聞いてみたんだけど、そしたらこれくらいの大きさの魔石は今かなり高くなってるんだって教えてくれたんだ。
「つい最近まで、ポイズンフロッグのせいで森の奥へと入っていく冒険者が殆どいなかったのよ。そのせいで入荷が極端に減っていたのに、ある魔道具が開発された事でこのクラスの魔石を求める人が多くてね」
「へぇ、どんな魔道具なの?」
「部屋の中を涼しくする魔道具で、クーラーと言うらしいわ」
まさかここでクーラーが出てくると思ってなかったから、僕はびっくりしちゃったんだよね。
でもさ、あれってそんなにおっきな魔石じゃなくても作れると思うんだけど?
「ねぇ、ルルモアさん。クーラーってクールの魔法で冷やす魔道具の事だよね? だったらちっちゃな魔石でもいいんじゃないの?」
「あら、よく知ってるわね。確かに個人で使う者ならそれでいいと思うのだけど、今は貴族の館や大きな施設で使う者が主流らしくてね」
広いとこを冷やそうと思うといっぱい魔力を使わないとダメだよね。
なのにちっちゃな魔石で作ったりしたら魔石が壊れちゃうかもしれないから、おっきめの魔石で作ってるんだってさ。
「そっか。だからおっきな魔石で作ってるんだね」
「ええ、そうなの。でもそのせいで、これくらいの大きさの魔石は値がかなり上がっていて」
今はポイズンフロッグもいなくなったし、森の奥へ行く冒険者さんたちも増えてきたからもうちょっとしたら元に戻るんじゃないかなぁ? ってルルモアさんは言うんだよ。
「でも、問題なのは今現在の値段が高いという事なのよね」
「魔石のお値段が高いと、何か困っちゃう事があるの?」
「何を言っているのよ。魔石が高かったら、それを使った治療費が高くなるじゃないの」
ルルモアさんはびっくりした顔で僕にそう言ってきたんだけど、僕にはそれが何でなのか解んなかったんだ。
だってさ、お姉さんたちは今から治すんじゃなくって、もう治ってるんだもん。
あっ、そっか! ルルモアさんは高くなってる魔石を使ったから、僕の事心配してるのかも?
そう思った僕は、ルルモアさんに大丈夫だよって言ってあげる事にしたんだ。
「あのね、クラウンコッコの魔石は僕が村でいっぱい狩った時に取ったやつだから、今高くっても大丈夫だよ」
「そうじゃないのよ。さっきも言ったでしょ? 治療費が高くなるのが問題なの」
「え〜、何で? お姉さんたちを治したの、街ん中じゃないよ。お外でなら治したお金、もらわなくてもいいんでしょ?」
ルルモアさん、さっきもそう言ってたじゃないかって僕は怒ったんだよ。
でもね、そんな僕にギルドマスターのお爺さんがごめんなさいしたんだ。
「そう、ルルモアを責めんでやってくれ。まさか君がこんなに早く魔石を触媒にした治癒魔法を使えるようになるなどと、ルルモアは思いもしなかったのだろうから」
ギルドマスターのお爺さんはね、ちょっと悲しそうな顔で僕に教えてくれたんだ。
「街の外であっても、治療に金がかかった場合はその費用を支払わなければならない。これはポーションだけでなく、魔石を触媒にした場合にも当てはまるのだ」
ルルモアさんも、流石にこんなに早くルディーン君のレベルが上がるなんて想像もしていませんでした。
なにせ前に冒険者ギルドで治療をした時に、昨日キュアポイズンを覚えたばっかりだと聞いていましたから。
だからこそ、魔法での治療にお金がかかる場合があると言う説明をしていなかったと言う訳です。
その上、なんとポイズンフロッグとクーラーのおかげで魔石の値段が絶賛高騰中!
大人たち、大変そうだなぁw